キューのリメイク  ハカランダのキュー  
ブラウザの文字サイズは「中」でレイアウトの表示確認をしています。     by 渓流詩人
クリックすると大きくなります ※このページの本文は、2005年12月17日に作成して
Web上にアップしたオリジナルテキストです。
<キューのリメイク>
長年使って塗装がはげたり傷ついたりしたキューはキュー
職人さんの手で新品同様に蘇らせることができます。
これを通常「リペア」と呼びます。
リペアには先角の交換や糸巻き・革巻き交換というもの
から、オーバーホールという大掛かりなものまであります。
このページでは、20年前のキューがキュー職人さんの手に
よって大掛かりな化粧直しを施される「リメイク」の工程を
ご紹介します。
<本日のレシピ>
  1986年製のADAM Helmstetter No.#86-9S

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<ADAM社とHelmstetterについて>

1960年代、世界的に卓越した日本の木工技術に着目した米国人リチャード・チャールズ・
ヘルムステッター氏は、自ら資本を投資して日本国内にアメリカン・タイプのキューメーカー
を作ろうと思い立ちます。
氏の志は、1970年、有限会社アダムカスタムキュージャパン設立として結実します。
ヘルムステッター氏は初代社長に就任し、その後17年間に渡り社長の任を勤めました。
氏は1986年にアダム社を退職して全権を日本人に委ね、現在はゴルフクラブのトップ
ブランドであるキャロウェイ社の副社長に就任しています。
私がビリヤードを始めた80年代中期、アダム製のキューはその社名からすべて通称
「アダムカスタム」と呼ばれていました。
アダムカスタムキュージャパンは1986年に社名を有限会社アダムに変更。
この頃から戦後2度目の大きなビリヤードブームの追い風を受けて増産体制が整います。
その後、95年には中国に工場を設立し、99年に株式会社アダムジャパンを設立。
2000年にはキュー革命と称したプロジェクトを起こし、2001年にはハイテクシャフトA.C.S.S
を発表したのはご存知の通りです。
ADAM Helmstetterというモデルは、量産化が始まる1986年に、初代社長であるヘルム
ステッター氏の名を冠して発表されたキューで、まだ商品種類も少なかった当時のアダム
社にあって、入門用のローエンドクラスの商品ラインとは別なキャラクタを与えられた
ミドルクラス-ハイエンドの商品ラインに位置しました。

Helmstetterシリーズにはアダムの表看板となる「子持ち8剣ハギ」や貴重な銘木
を使用したものがラインナップとして揃えられ、その後の「87モデル」に継承され
て行きます。
私のモデルは、86-9S、1986年製のモデルNo.9というものです。
86モデルは86-1から86-17までがラインナップされ、手元の資料によると1986年
(昭和61年)当時の定価は、86-1が\35,000、86-17が\130,000となっています。
86-9は当時の定価が\60,000の製品で、私の86-9S(Sはステインの意味)は定価
\65,000でした。
ステイン(stain)とは、「染み」という意味です。
読んで字のごとく塗料を木材に染み込ませる塗装工法のことをこう呼びます。
ステインを施してあるのは最高級のアメリカン・カスタムもしくは極端なロークラス
のキューに限られています。
高級カスタムはメイプルの虎や鳥目の杢目を引き立たせるため、またロークラス
キューはあまり綺麗でない木目を目立たなくするための目的があったようで、
1980年代に大変流行した塗装方法でした。
ADAMのキューにはADAM社独特の薄い墨汁を塗ったような灰色がかったステイン
が施されていますが、高級感を出そうとしたのか、あるいは廉価キューの木目を
隠すための化粧なのか、今ひとつ製作意図が明瞭に伝わってこない印象があります。


<ローズウッドについて>
木工の世界では、本来「ローズウッド」とは、ブラジリアン・ローズウッド(Jacaranda=
ハカランダ)のことを指します。
ハカランダとはブラジルのバイア州の特定地域で産出する豆科の香木で、大変硬くて
粘りのある木材です。
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ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)

この86-9Sモデルの剣ハギの中央とバットスリーブには、現在ワシントン条約で輸入禁止
となっているブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)が使われています。
ワシントン条約とは、国際取引を規制して絶滅のおそれのある野生動植物を保護する
ことを目的とした条約で、日本は1980年に同条約を批准しています。
条約適用前に伐採されたものに限り、輸出国と輸入国、両方の許可を得て初めて輸出入
が可能、また、条約施行後のものに関しては商業取引が全面的に禁止となりました。
現在、ココボロとアマゾンローズウッドはワシントン条約の対象外となっています。
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ハカランダの剣ハギ

シーズニング(乾燥)に要する期間と発売時期から鑑みて、ワシントン条約発効以前に
伐採され輸出されて国内に入ってきていた本物のローズウッドのストックを使用した
ものと思われます。
事実、今回の作業過程において部材の香りをかぐと、ブラジリアンローズ特有の仏壇の
香りがしました(^^;)
アコースティックギターの集まりでハカランダ製のギターを持ってきた人は必ずマニア
の人に「お約束ですから」とサウンドホールに顔を近づけて香りをかがれてしまいます。
それほど、ハカランダはインディアン・ローズやコーラル・ローズとは違う特有の芳香
を放ちます。
南北アメリカ大陸全般にハカランダの植生がみられますが、ブラジルのバイア州の
一部で産出するハカランダ=ブラジリアン・ローズウッドのみを本来はローズウッド
と呼びます。
ハカランダは春になると薄紫の藤色(ハカランダ色?)に染まる可憐な花を咲かせます。

ハカランダの花

特に南米では、公園にハカランダがあふれていたり、街中の通りに街路樹の並木と
して植えられていたり、住宅街の角に植えられていたりしていて、人々に大変愛さ
れている樹木のようです。
アルゼンチンでは春(南米なので10月末〜)に咲くため春を代表する「アルゼンチン
の桜」とまで呼ばれて親しまれています。
日本で桜が咲く頃に新学期が始まるように、南米の人にとっては10月末〜11月初旬に
ほころび始める薄紫色のハカランダの花を目にするとき、春の訪れを感じるのかも
知れませんね。

これは北米はカリフォルニア、LAのハカランダ


メキシコシティー、デル・バジェ地区のハカランダ並木


アルゼンチン、ブエノス・アイレス市内の公園のハカランダ


ブエノス・アイレスの街中のハカランダ


こちらは同じ豆科で日本を代表する木−藤 (岡山県和気町藤公園)


乾燥したハカランダは、トーンウッドと呼ばれ、叩くとまるで金属のような音がします。
音の反響に優れているため、大昔からギターや笛や木琴などの楽器に使用されてきま
した。
しかし、伐採され過ぎてしまったため絶滅危惧種に指定され、現在ではブラジルからの
輸出が全面的に禁止されています。
かつてハカランダの資源が豊富だった頃には日本でも多く輸入され、仏壇やテーブル、
楽器、太鼓のバチなどに使われました。
ほんの20年程前には、まだ国内の材木商には相当な数のハカランダのストックがあった
のですが、現在では0.6ミリのツキ板を探すのさえ困難な状況です。
もしハカランダで何かを作ろうと思ったら、古道具屋などで古いテーブルや仏壇を入手
して無垢材として加工するのも手かも知れません。
ブラジリアン・ローズウッドが輸出禁止になってから、キューやギターの材料としては
ココボロ(メキシコや中米産)やインディアン・ローズウッド(インド産)、ホンジュラス・
ローズ(=ニューハカランダ、中米ホンジュラス産)、コーラル・ウッド(東南アジア産)
などが使われ始めました。
しかし、伐採しすぎると近い将来ハカランダと同様に入手が困難になることが予想され
ます。
本黒檀(エボニー)の真黒の部分をマグロと呼びますが、これももう現在では極めて
入手が難しい木材になってきており、濫伐による環境資源の枯渇に私は危機感を
感じます。

私が苦労して2005年4月に材木商から確保した本黒檀のマグロのストック。
何かに使われていた物を木材として再生したのだろうか、ホゾが切ってある。
まだ自作キューを世間に発表していない実力のあるリペアマンの手によって
将来キューになる日を待っている。




  ハカランダを使用した私のHelmstetterの
  キューは、約20年という歳月を私と共に
  過ごした思い出深いものです。
  26歳のとき、ポケットビリヤードを始めて
  2ヶ月目、1.7穴の渋穴華台で生まれて
  初めてブレイク&ランナウト(マスワリ)を
  出したのもこのキューでした。
  他にもいろいろな「球筋」をこのキューで
  覚えました。
  その後、リチャードブラックのブシュカを
  購入するまで、随分と賞金や賞品を持っ
  て帰ってくれたキューでもあります。
  戦前のマッセの神様、上野の肥土軍作氏に
  マッセを教わったのもこのキューでした。
  晩年、軍作翁はこのキューを使って手玉を
  自在に操る技を「数十年ぶりだ」と言いな
  がら、目の前で私にだけ見せてくれました。



その後、シャフトは試合のブレイクの時に折ってしまったので、87年の春に淡路
亭で作ってもらったハードロックメイプルのソリッドシャフトに換えています。
シャフトが適度にしなり、シャフトとバットの振動が程よくマッチして、とてもよく
「切れる」キューです。
現在私が所有するキューの中で一番「キューが利く」タイプの物です。
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上から
TADストレート(1995年製)
メーカー不明の全黒檀
Helmstetter 86-9S(1986年製)
Schon R-21(1984年製)
Paul Mottey(1999年製)
Lightning-Pro speed



しかし、いわゆるじゃじゃ馬ではなく、手玉は暴れない。
手玉の進路のズレも予想外の動きをせず、そのため手玉の動きを察知しての見越し
(リード)を取るのが楽です。
入れが堅くて切れもいい、という理想的なトータルバランスを有するキューといえ
ます。
きっと、シャフトの素材とテーパー、先角の材質、それにバットの特性がマッチして
よい作用をもたらしているのでしょう。
タップはいろいろ試しましたが、ブランズウィックブルー10トン締めがこのキューの
淡路亭シャフトには合っているようです。
このタップによってシャフト本来のトーン特性も引き出され、木琴のような澄んだ
高音を発するようになりました。


<シャフトに関しての考察>
キューの打感と打球音ばかりは、キュー全体ができ上がってみないと確認できない
もので、たとえ高級なカスタムキューであってもこの定式から逃れることはできま
せん。
むしろ、手近な出来上がったハウスキューやデッドストックの古いブランク材の中
からよい音がする個体を選び出して、そのシャフトをテーパー加工してカスタム
キューに移植したら、良いサウンドと打感と運動特性を得られることがあったりします。
年輪の密度は一定程度の判断基準にはなるようですが、年輪の数は厳密には
シャフト材内部の繊維密度や適切な気乾比重によるコンディションへの影響等とは
関係が薄いようです。
現に、シャフトの途中にフシやスのある材料で最良のサウンドと打感を運んでくる
ガス・ザンボッティーの作品例もあります。
確かな目を持ったカスタムキュー職人は、年輪とは別の「木を見極める」独自の
判断のモノサシを備えているように思えます。
ですから、たとえ高級カスタムだろうと、デフォルト版の廉価キューであろうと、
試し撞きができないままキューを買うことにはいつでもリスクが伴います。
こうしたリスクを回避する手立ての一環としても、僅かに個体差があるとはいえ、
一定水準の品質を均一に確保しているハイテクシャフトの存在は侮れないものが
あります。
しかし、ハイテクシャフトは品質のばらつきの範囲が極度に狭いため、かえってそれ
がアダとなって、どんなバットに装着しても金太郎飴みたいに個性のないキューに
なってしまうという一面があります。
また、ソリッドシャフトに特有の「トビ」や「カーブ」がでにくいハイテクシャフトは、
エフレン・レイズのような予め手玉のカーブを想定した曲者的(^^;)な球筋を持ち味
とするヒネラー系の古風なプレーヤーには敬遠される傾向にあるようです。
むろん、ハイテクシャフトはキュー先の方向にしか手玉が進まないため、奥村プロ
がよくやるような横に「はらう」ようなショットや、撞く瞬間にキュー先を横に逃がす
「切り押し」や「切り引き」のようなトリッキーなキューさばきは苦手となります。
従って、あくまでも真っ直ぐにキューをトンと水平に出す撞き方をした時にハイテク
シャフトの本領が発揮されます。
キュー先の方向に手玉が進行するハイテクシャフトを装着したキューの撞き方は、
ヒネリを加えるときには「大きなトビ」を考える必要がないので、当然、レストの
位置もソリッドシャフトとは違って横に平行移動させてやる必要があります。
順を入れる場合、ノーマルならばまず真ん中で厚みを合わせ、レスト位置はそのまま
でキュー先だけを順撞点にずらせば、手玉の横トビによって厚めに的球に当たり、手玉
順スピンがもたらす的球逆スピンによる薄め外しが相殺されてポケットインとなります。
しかし、ハイテクシャフトのようにトビが極端に少ないシャフトの場合は、キュー先
方向に手玉は進みますので、順を入れた場合、ずらした撞点方向に手玉がズレて進ん
で的玉に薄く当たり、そのままの順スピンがもたらす的球逆スピンにより的球はさらに
薄めに軌道を取りますので、さらに薄く外してしまいます。
これは何もハイテクシャフトに限ったことではなく、手玉の横トビが少ないシャフトは
ノーマルシャフトでも、この原理を理解して補正=見越しをとってやる必要があり
ます。
ただ、いえることは、ノーマルシャフトでもハイテクシャフトでも、「見越しのない
シャフト」というのは存在しません。どんなシャフトでも、玉ズレの度数に合わせて
見越しをとってやる必要があります。
ハイテクシャフトは、製品の均一化を狙って製作したところ、瓢箪から駒でキューの
持つ様々な運動特性のうち「シューティング」という一側面を抽出して特化させること
になったという特徴を持つ製品といえますが、手玉の動きのバラエティーさはアーティ
スティック競技で多く好まれているのをみても分かるように、ソリッドシャフトの方が
優れています。
しかし、一定の安定した個性を求めるならば、キャラクターが固定しているハイテク
シャフトに軍配が上がります。
また、キャロムの世界では、手玉が直進するハイテクシャフトの登場により、世界記録
が瞬く間に塗り替えられました。
まさに武器としてのハイテクの名に恥じないものだと思います。
ただし、ポケットの場合は、手玉を走らせることが主眼のキャロムと違い、手玉の
直進性が即座にポケットインのアベレージに繋がるという単純なものではない、という
競技の性格の差異から、ポケットビリヤードの記録更新にハイテクシャフトが貢献
している訳ではありません。
事実、古いプレーヤーのみならず、史上最年少の世界チャンピオンのウー・チャーチン
も、ハイテクシャフトは使用していません。
ポケットインが簡易になると勘違いしてハイテクシャフトを求めるのは、初心者まで
といえるでしょう。
また、ハイテクシャフトがキューメイキングにおける「作品」という概念で括れるか
どうかという点になると、私にはやはり甚だ疑問です。
日本全国どこででも味が変わらないマクドナルドのハンバーガーと、一店構えの料亭
の料理との違いといったのようなものでしょうか。
また、キューが奏でる「サウンド」に関しては、ハイテクでもソリッドでも、天然木を
使用している限り、個体差という桎梏から解き放たれることはありません。
科学技術をもって、奏でる「音」まで狙い通りに再現できるとしたら、それはそれで
素晴らしい技術ではあると思いますが、そうなるとキューという道具がどんどん人間
から遠ざかって行くような気が私はします。
近未来のビリヤードシーンで、人が撞くキューがすべて同じ音がして、すべて同じ運動
特性を見せるとしたら。。。。
そして、ビリヤードをする人間の表情もすべて同じ表情だとしたら。。。
想像したら、ちょっと背筋が冷たくなります。
気がついたら、カラーボールもすべて同じ色に統一されて、ボールも人もただ背番号が
つけられているだけだったりして。。。。(+。+;)


<キューのリメイク>
さて、86-9Sはしばらくお蔵入りしていましたが、20年ぶりに化粧直しをすることにし
ました。
ただクリア再塗装でリペアするだけでは物足りないので、バットスリーブ(バット下部)
を大改造することにしました。
以下は、その作業工程に添って画像で説明したものです。


【改造項目】
1.フォアアームのステインはがし----メイプルの木目を直に出したいため
2.バットスリーブ新規作成----リングは加工再利用。スリーブ本体はハカランダ
3.エンドキャップ新規作成----某アメリカンの大御所風ホワイトデルリン
4.糸溝加工----グリップ上端位置を移動してデザイン的なバランスを調整
5.芯出し----バット全体にわずかな曲がりが出ているので真直ぐに加工修正
6.ジョイントリングの鏡面仕上げ
7.グリップ部の太さ調整----某アメリカンの大御所と同寸に加工
8.糸巻き交換----某アメリカンの大御所と同じライトグリーン/ホワイトリネン
9.バット部クリア全塗装


 (画像はクリックで大きくなります)

クリックすると大きくなります バンパーゴムとウエイトボルト、エンドキャップを取り外した状態。
この時点ですでにフォアアームのステインはがしは大まかに済んでいます。
また、20年の手垢が染み込んだグリップのアイリッシュ・リネン麻糸も除去されています。
新たにバットスリーブに使用する木材は本物のハカランダ。
幸運にもワシントン条約発効以前に入手していた貴重なストックをキュー職人さんに分けてもらうことができました。
太鼓のバチのようなストック形状から使いたい杢部を直接指定しました。
杢目がかなり綺麗です。
香りはハカランダ特有の香り。
ただ、外気に長年さらされていたためか、新しく使う部材よりもキューに元々ついていたハカランダ部分の方が強い芳香を放っています。



クリックすると大きくなります リヤ・スリーブを分解した状態。














クリックすると大きくなります ここで問題発覚!
なんとAdamさん。スリーブとグリップをつなぐジョイント穴のセンターがずれています。
これを加工するには新たにセンターコア材を注入して、きっちりとセンター出しをした後にジョイント用のボーリングをしなくてはなりません。
先にジョイントさせてから、ジョイント側とバットエンドを2点で支えて旋盤で外周を削り出すために、芯はどうしても偏心してしまうことがあるそうです。
バラしてみるとAdam社のキューは特にこういうことが多い。
ところがMezz社のキューはどれもビシッとセンターが出ているそうです。
どういうことなんでしょう?(^^;)





クリックすると大きくなります 別な角度から見た画像。
このAdamさんは明らかに偏心しています。
キュー職人さんによると、プレー上は機能的に何の問題もないそうです。
外見がまともでも、バラしてみないと何があるか分からないことがキューの世界にも結構あるとのことです。
あい〜〜ん(><)そんなもの?

初めからキューを作るのなら、きっちりとセンターを出さなければならないのは当たり前ですが、偏心したキューを直すのはとても難しいのです。






クリックすると大きくなります 新たにバットスリーブ部分となるハカランダを旋盤で大まかに削り出し、元のキューから取り出したリングを移植します。
ここで問題発覚!
リングが歪んでいます。。。(-_-)
これも、厳密には曲がっている木というものを2点で支えて旋盤で回転させて削るので仕方がないことなのだそうです。









クリックすると大きくなります リングはなんとか移植できそうです(ひと安心)。
新しいスリーブのハカランダの木目がビューティフル!
ウ〜ン、ベリー・キュート!ベイベー!です。
でも、取り付ける向きを間違うと、デザイン的に間の抜けた物になってしまうので注意が必要です。










クリックすると大きくなります キューと並べてみました。
キューと・・・う〜ん、キュート♪(すっかりオヤジです)













クリックすると大きくなります さて、ここからが少し大変。
グリップ部分の偏心した穴の修正に入ります。













クリックすると大きくなります ただ穴をあけて芯材を接着剤で埋め込むだけでは、キューの密着性に問題が生じますので、面倒でもタッピングしてきっちりと芯材が木部と一体化するようにネジ切りをします。
手を抜かない職人の心とは、こういう見えないところに生きています。











クリックすると大きくなります 専用に作製した木ネジをグリップ側にはめてみて仮合わせします。














クリックすると大きくなります グリップ部分とバットスリーブを連結する木ネジを本格的に作ります。
何の木材を使ってるか、おわかりでしょうか?(ヒント:削りカス)
外から見えない芯材といえども、打球性能に影響を与える重要なパーツなので、それ専用の材料を使います。











クリックすると大きくなります ここからは偏心した穴を埋めるためのボーリング加工です。














クリックすると大きくなります 丁寧にホゾを切っていきます。














クリックすると大きくなります こんな感じ。
ここには木ネジを受けるメイプル材がねじ込みで埋められて接着されます。
この職人さんの作るキューの連結部分は、エンドキャップのみを除いて、すべてネジ切り加工で連結されます。
これが耐久性と打球性能を飛躍的に向上させます。
トリックショットで有名な「世界の木村」プロは、某カスタムメーカー製のすべてネジ連結構造のキューを使っています。








クリックすると大きくなります ハカランダのバットスリーブのセンターに穴をあけて木ネジのメス部をタッピング加工します。













クリックすると大きくなります ジャカジャ〜〜〜ン。
ハカランダと並んで、今回のリメイクの目玉!
わかる方はおわかりでしょう。
そうです。
某大御所カスタム・キュー・ビルダーのトレードマーク。
ブライアン・スタイルのロング・ホワイト・デルリンです。
全長5.5センチ(なっげ〜)。
当然キャップのエンド部は緻密にRをTADと同じように再現してもらっています。
デルリン・フェチの私としては嬉しい限りです(^^)

あら?
写真がぼけてるじゃん。。。


クリックすると大きくなります おおまかに出来上がったパーツ類を並べてみます。

Adam純正のバンパーゴムの形状と長さにご注目ください。












クリックすると大きくなります ここは私のアイデアを職人さんに採り入れてもらいました。
TADの純正バンパーゴムは綺麗な丸型の形状をしています。
しかし、TADのゴムはすべて細い金属ネジで直にキューにねじ込む方式。
ウエイトボルトは使われていません。
これは最初からキュー全体のバランスや全体重量を考えてバットテーパーを作っていくTADならではのノウハウがあるからできることであって、一般的なキューメイキングの手法からすると簡便さに欠ける手法ともいえます。
今回のキューは、ウエイトボルトの長さや材質(スチール or アルミ)によって後日バランスと全体重量を可変させられるようにしたいので、あえてTADオリジナルバンパーゴムを使わずにAdamオリジナルのゴムとウエイトボルトを使うようにしました。
しかも、ゴムが収まる深さを綿密に寸法出ししてもらい、ゴムのR部分のみが突出してデルリンキャップのRの延長ラインと重なるように設計し、可変ウエイトボルトを使用しつつオールドタッドの雰囲気を出すようにデザインしました。

クリックすると大きくなります こちらは本物のTADの丸形のダンパーゴムです。
品よく収まっています。
エンドキャップのRラインも、きりりとしてとても美しい。
このキャップのRの表現はとても難しいのです。
気を抜くと、ダラッとした、ただの丸いRになってしまいます。
TAD CUE には、美術的に秀麗なTAD独特のRのラインが存在します。




クリックすると大きくなります こちらもオールド・ビンテージ・タッドですが、これはTADでは例外的な可変ウエイトボルトタイプのプレインキューです。
ゴムはSchonなどと同じようなタイプを使用しているようです。







クリックすると大きくなります これはTad Koharaさんの息子さんFredの最近の作品。
安全のため、10年ほど前のパパ・タッドの時代から、少しだけゴムの突出量を多くしているようです。











クリックすると大きくなります これは1994年頃のパパ・タッドの作品。
デルリンキャップのRを緩めにとってあるものです。












クリックすると大きくなります こちはらデルリンでない素材のエンドキャップ。
素材は、Ivorine-3あたりでしょうか。
キャップお尻のRは緩めにとってあるタイプですが、ゴムの突き出し量を若干多めにとっています。
これもキャップとゴムのRのラインが美しくまとまっているTADらしいセンスです。
TADはキューエンドのお尻のラインがとても綺麗だと思います。
エンドキャップのRの放物線の延長とゴムのRのラインが一体化したようなデザインは、他のカスタムキューには全くみられないことです。
たとえ安全対策のためのゴムひとつであろうとも、TADの手にかかれば、造形美の一翼を担う役割を与えられていることが分かります。



クリックすると大きくなります こちらもパパ・タッドの作品。
シリアル#1560の1995年製で、私のTADストレートです。
TADはセルロース系のラッカーを使っているようで、数年経つと黄色に変色してしまいます。
あまりに真っ黄色で見苦しく、しかもはがれてきたので、2004年の年末に2液性のポリウレタンクリアを使って自分でバット全体をリフィニッシュしました。
ウレタンも黄化しますが、こちらは象牙の経年黄化(パティーナ)のようにオレンジがかった飴色に変色して潤いに深みが出ます。
TADは何か理由があってラッカー系を選択しているのだろうと思いますが、キューの振動を妨げずに木部を保護するためには、私はセルロースラッカーの方が適しているように思います。
塗料について
(画像はクリックで大きくなります)



クリックすると大きくなります さて、86-9Sに新デルリンを仮に組み付けてみます。
まだバットスリーブの外周削り出しはしていません。













クリックすると大きくなります 仮にリネン糸を少し巻いて糸溝の深さ、配色のバランス等を俯瞰して確認します。
デザイン的に大切な部分なので、全体の配色バランスと合わないなら別な糸色を選択する必要がありますが、これはキュー全体との配色バランスもマッチしているようです。
私が絵を描くときにいつも感じているのですが、スケッチや素描の段階と彩色の段階では別なセンスが要求されると思います。
このことで以前キューリペアマンの方と歓談しましたが、「色あわせ」は、ものを描くときに神経を使うけれども、想像力が膨らみ、とても楽しい時間が過ぎて行くものです。





クリックすると大きくなります Adamのキューはリネン糸巻きのグリップ部分の上端が他のカスタムキューと比較して低い位置にあり、全体的なバランスを欠くきらいがあります。
思い切ってフォアアーム部分を削り出して糸溝加工してもらいました。
長さの割り出しは、本歌のTADやザンボッティー等のカスタムキューのバランスを参考にしています。
マッセやプレーキューでのジャンプショット以外に実際に握ることの少ない部分ですが、キュー全体のデザイン上のバランスを考えると、グリップの上端部分の位置は重要なファクターであると私は考えます。







クリックすると大きくなります 別な角度から見てみます。














クリックすると大きくなります これも別な角度。














クリックすると大きくなります ステインを剥がす前のフォアアームのハギ。
このモデルのハギのタネ板は、中央からハカランダ、オレンジベニア、茶色ベニア、薄い厚みの黒ベニア、濃いジャーマンブルーのベニア、薄い厚みの黒ベニア、という凝ったもので、高級カスタムキューと比肩しても決して見劣りのしない綺麗なハギを形作っています。
(画像はクリックで大きくなります)











クリックすると大きくなります さあ、全体のイメージが形になってきました。
仮に組み立ててみました。
フォアアームのステインはがしは、キューを旋盤にかけてカッターの刃ひとつで丁寧に薄く削り出してはがしていきます。
この段階で20年近い歳月を経てバット全体に生じていた曲がりとゆがみは、旋盤による職人技で補正加工が施されています。
内部連結のネジも樹脂含浸特注材でセンターコアの役目をするハイテク構造です。
ロングデルリンをつけても、バット全長は加工前と全く変わっていません。
あとは、グリップの太さ調整加工とステンのジョイントカラーの鏡面仕上げ、クリア全塗装→時間をかけて乾燥→研ぎ出し→ポリッシュ研磨を経た後、リネンがハンドル部分に丁寧にラッピングされてローラーをかければ完成!!





【ごく初期段階の打ち合わせ用イメージ図(合成写真)】 この段階では寸法等の詳細はまったく未定であった。
上:リメイク前
下:リメイク後




【実際のリメイク途中の作品と製作前の画像比較】
上:リメイク前
下:リメイク途中
撮影角度が異なるので寸法の単純比較はできませんが、イメージはこのような感じです。




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【2006年2月4日 追記】

じゃかじゃ〜ん。
2006年2月1日に出来上がりました!


ハギのブランクがAdam、アイリッシュリネンとバットスリーブと
エンドキャップはTAD風、シャフトは淡路亭というジャムセッション!
上から下まで、完璧なチャンポンのキュー!
「チャンピオンのキュー」に似てい・・・ないか(^^;)
しかし、こんなごった煮のキューを使う奴、日本中探してもあまり
いないような気がする。
細かいスペック通りに仕上げてくれた職人さんには感謝しています。
先角は別な職人さんによって渓流スペシャル本象牙に換装して、これに
自分でテーパーをつけてセッティング完了。


フォアアームです。綺麗にステインが剥がされています。
なんとなく、ハカランダのハギも磨かれて生き生きしている
ような気がします。


バットスリーブのブラジリアンローズウッド。
これが今回のリメイクの目玉です。
今後はまず入手困難な超希少材の本物のハカランダ。
ギター材でもストックが国内には殆どなくなってしまい、
ホンジュラスやインディアン・ローズで代用しています。
これは、正真正銘のブラジリアン・ローズウッド=ハカランダ。


別な木目部分。
いやあ。私のハカランダギターとよく似た木目です。


お尻のデルリンエンドキャップはこんな感じ。
とてもタッディーなテイストに仕上がっています。
バンパーゴムもAdamのオリジナルとは思えないでしょ?(^^)


これは何でしょう?
太鼓ではありません。
もともとついていたスリーブの部分です。


横にするとこんな感じ。
こちらも、とっても綺麗なローズウッド独特の杢がでています。
それに何よりも、香りがすごい!
思いっきりハカランダの香りを放っています。
ホントに仏壇の匂いにソックリ(笑)
単板でなくてハカランダのツキ板(1.2ミリ)合板で作られた私のギター
でさえもサウンドホールの中に鼻を突っ込んで香りをかぐとハカランダ
の香りがするのですが、こちらの元スリーブは丸棒材だからか、はたまた
クリア塗装で空気に触れていなかったからか、ギターよりも数倍強い香り
がします。
小学生の娘に「これがハカランダ様だぁ〜っ!」と匂いをかがせたら・・・
「いや〜ん。くさ〜〜いっ!」

ですと?
臭いとは何事かっ!ハカ様のバチが当たるぞ!ナムナムナム。。。
ハカ荒らしはバチが当たるんだから。
ハカ探し、ハカあさりに歩けばバチに当たるのは本当の話。。。


【追伸】
ハカランダをキューの材料としてお探しの方に耳寄りな情報。
「和太鼓のバチ」には、ワシントン条約締結以前に日本に大量に
輸入されたブラジリアンローズウッドを使用した物が多く存在します。
実際に演奏に使用されたバチは木の「動き」も止まっているので
それ以上の曲がりなどの懸念も少ないと思われます。
万が一、ネットオークションなどでブラジリアンローズウッド製の
和太鼓のバチを見つけたときには、即押さえることをお奨めします。
ハカランダのバチは結構ネットオークションに出品されます。
ただし、実際に手にしてみたら、ホンジュラスだったりインドだったりで
ガッカリしてしまったり、ハカを求めて血眼になってネットオークション
にハマって散財してしまったりして、墓に眠ることになっても、本サイトは
責任は持てません。。。。(^^)
                              by 渓流詩人



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似てるキューを作ったからと
怒らないでね、Tadパパ。
どうぞ、私の青き春の憧れとお赦し下さい。





(December,17.2005:by 渓流詩人 )


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