Ingram M11   マルゼン   
ガス・ブローバック
MAC11実銃 ※このページの本文は、2003年4月14日に作成してWeb上にアップしたテキストです。

<実銃について>
口  径:380ACP
重  量:1.59kg
全  長:248/460mm
発射速度:1600rpm/min
有効射程:25m



MAC10実銃 <MAC10について>
M11を語る前にMAC10の数奇で悲惨な歴史を述べなければならない。
第二次大戦後、米国の銃器設計者ゴードン・イングラムはイスラエルのUZIサブマシンガンを参考に45ACPと9mルガー弾を使用するM10を発表した。1970年のことだ。
M10は生産コストが廉価で、生産性も高いプレス方式のボディーで設計された。
1960年代後半に完成し、Military Armament社(MAC)が製造・販売したため、MAC10と呼ばれた。
MAC10はベトナム戦での米軍特殊部隊に好んで使用され、70年代初頭、イスラエルも含む多くの国で売れ行きを伸ばし続けた。
しかし、これはUZIの製造元であるイスラエルのIMI社(Israel Military Industries Ltd.)にとっては脅威となった。
イスラエル資本の米国に対する政治的影響力は、表の部分も影の部分も、我々日本人には計り知れないくらい大きいものがある。
MAC社は何の理由もなく、国務省から輸出許可を剥奪されてしまう。米国内のみではMAC社の経営を維持するだけのサブマシンガン市場は存在せず、MAC社は70年代後半に倒産してしまうのだ。
だが、80年代初期、投資家と有志によりRPB社が起ち上げられ、MAC10はM10と名称を変えて再販され始める。
82年当時のRPB社M10の価格は135米ドルであり、米国内外で売れに売れた。
これにイスラエルが黙っているはずがない。再びM10潰しが開始された。
M10はオープンボルトであったが、米国は1984年にセミオートであってもオープンボルトを禁じる条例を制定して、米国内でM10が販売できないようにしてしまった。RPB社は倒産した。
RPB社はM10の38口径(9mmカーツ=ショート)弾タイプである小型のMAC11をM11として販売していたが、それを倒産前に9mmルガー弾仕様に作りかえる計画を立てていた。それはM11/9と呼ばれた。
RPB社倒産の後、RPB社員だったウエイン・ダニエルズがSWD社を設立し、M11/9を市場に投入した。
しかし、販売と同時に米軍・CIA・シークレットサービスに納入が決まった(笑)イスラエルIMI社のマイクロUZIに比して、M11/9は優れた性能にもかかわらず、シェアを確保できなかった。既に絵は描かれていたのだ。
さらに駄目押しで、86年にレーガン大統領がフルオート用レシーバーの製造と民間への販売を禁止した。SWD社は倒産した。
M11/9の前身のM11=MAC11は、イスラエルのコマンド部隊が大変気に入り、エンテベでのハイジャック犯襲撃の時にも使用した。このときの映像は報道でも採り上げられ、M11を構えるイスラエル兵士の姿は世界中に配信された。
これはイスラエル国内メーカーのIMI社にとっては極めて屈辱的なことであり、IMIオーナーやイスラエル金融資本の感情を逆なでにしたと言われている。
これがイングラムのサブマシンガンをイスラエルとそれに同調する米国資本・政治家が排斥する理由のひとつである、というのが常識的見方とされている。

<M11について>
MAC10は9×19mmと45口径用のタイプがあったが、MAC11は音速以下の38口径弾を使用する極めて小型のサブマシンガンだ。大型の軍用拳銃よりも小型なのである。
小型過ぎるのと発射速度が著しく速い(M10が1100rpm/min。M11は1600rpm/min)ため、MAC11のフルオートでのコントロールは非常に難しく、訓練を積んだ者でないと連続射撃はできないと言われる。「プロが使う銃」と呼ばれる所以がこれだ。
セミオート・モードでの射撃もできるが、サブマシンガンに要求される要件とは「弾のばらまき」である。
だが、サウンド・サプレッサー(減音器。「サイレンサー(消音器)」と呼ぶのは厳密には誤りである)を装着したイングラムは訓練された者にとってはとても力強い武器となる。イングラム・サブマシンガンを語るときには、その優れたサウンド・サプレッサーの構造に触れることを避けては通れないのであるが、これについては別の機会に譲る。

マルゼンM11 <トイガンについて>
いわくつきのイングラムは、実銃の歴代製造元が軒並み潰された後も、日本のトイガンの世界にまでその亡霊を呼び起こしている。
いわゆる、WA社(ウエスタン・アームズ社)が、ガス・ブローバック構造をめぐって同業他社を被告として、東京地裁に提訴した複数案件がそれである。
いままで調和を保っていたトイガン業界においてリーダーシップをとっていたWA社が、いきなり同業者を訴えた真意は定かではない。ただ、その訴訟においてはことごとくほとんどの案件において「WA社の敗訴確定」という厳然たる現実が横たわるばかりである。まるで、空虚な屍を見る思いだ。
私としては、WAに訴えられた現タニオコバの小林氏はMGCのガンデザイナーだった頃から六人部氏と並んで日本トイガンの父と思っていたし、WAの国本氏は子どもの頃から私淑したGUNの神様のような存在だった。また小林氏と国本氏は、提訴前夜まではとても気の置けない間柄だったと聞く。この裁判はとても悲しい出来事だった。
ほとんどの訴訟で、訴えた側のWAが敗訴する中で、マルゼンのイングラムについては一部特許権侵害が認められ、マルゼン社は構造の変更を余儀なくされた。
ここで紹介するマルゼンM11は改変後のタイプのものである。

<スペック>
発射方式:ガス式マルゼンブローバック(アドバンスシュートシステム)
使 用 弾:6mmBB弾
装 弾 数:24発(50発)
最大射程:50m(最適角度で上方に発射した時)
初  速:70mps/0.2gBB(0.49J)
バ レ ル:内径6.05mm
全  長:254mm
重  量:825g(24連マガジン装着時)
材  質:ABS、ジンクダイキャスト

マルゼンM11 手にしてみると、なるほど小さい。コルト・ガバメントよりも小さく感じる。
M10はUZIを小型化したサブマシンガンとの印象が強かったが、M11は「サブマシンガンの形をした拳銃」といった例えがふさわしいかも知れない。
初速は一般的な数値である。24連マガジンにガスをフルチャージして約80発撃てるとのことだ。1月の気温でも充分に作動していたのは頼もしい。
固定ホップアップのため、現実的な有効射程は20mくらい。
しかし、実銃でも有効射程は25mとされているので、ガスブローバックとしてはこんなものだろう。
ゲームで使用するならば、あくまでも近距離用であり、野外でのサバイバルゲームよりも、屋内での接近戦用といえる。
屋外で使うならば、メインウエポンではなく、バックアップ用として緊急時に弾をばらまくのに適しているだろう。
マガジンチェンジがしにくいのは実銃譲りでリアルである(笑)。

ストックはワイヤータイプの可動式で、後端まで引っ張ると抜けてしまう構造。トイガンの射撃においてはヴィジュアル的な「リアル部品」という感がしないでもない。
実銃の場合、M11の射撃はその小ささゆえ大変な危険を伴うといわれるが、エアガンの場合も弾が出るために同様の危険を伴う。フォアグリップの代わりにリシーバー前方に吊り下げたストラップを握って射撃するのであるが、銃身が短いので、自分の指を撃たないように注意すべきで、無意識に銃身より前に手を置かない練習が必要だ。やはり、安全のためにも、実銃同様にサプレッサー装着を使用の際の前提としたいところ。

マルゼンM11 また、実銃同様にオープンボルトからの射撃となるので、屋外での射撃の際に砂塵や草が機関部に噛み込まないか不安があった。
しかし、実際にフィールドで使用してみると、案外これは杞憂であることがわかる。
とにかく、パコパコとボルトが動いて連射できるので、なかなか楽しく、電動ガンにはない面白味がある。
ただ、ロングマガジンの継ぎ目からシューッとかすかにガス漏れがする。
Oリングのシーリングが甘いようだ。
これはメーカーから対策パーツが無償で供給されるとのことだ。

フォルムは昔の携帯電話みたい。ユニークでかわいい。
実銃がイスラエルの政治力によって抹殺されただけに、せめて玩具の世界では息長くメーカーからリリースされることを願ってやまない。


(Apr,14.2003:by 元木正太)

【追記】
2008年5月現在、絶版になったようです(涙)


ガンモ所有のトイガン